芸術文化学研究科(後期博士課程)芸術文化学専攻は、比較芸術学と民族音楽学の二つの研究領域にそれぞれ三つの研究分野があります。学生はいずれかの研究分野に属して研究指導を受け、必修科目として「芸術表現総合比較研究」、選択必修科目として3科目を履修し、博士論文の審査に合格すれば修了し、博士(芸術学)の学位が授与されます。
●比較芸術学研究領域
■比較美学・芸術学の分野では、芸術体験の価値構造の分析から導かれる諸契機により、東西を比較類型学的に解明しながら、東洋的芸術精神への反省を行なうことを課題の一つとしています。また図像解釈学の方法により多様な図像の解釈を行なうと共に、方法そのものの現在のあり方を批評的に考察することも研究の課題としています。
■芸術批評史の分野においては、作家による作品の歴史という従来ありがちな美術史学の研究方法の限界を反省しつつ、美術工芸作品を産み出してきた思想的・歴史的な背景を厳密な史料的把握を通じて、西洋・日本・東洋のいわば精神史としての美術工芸史を人文科学の諸方法を用いて構築することを目指します。
■民族芸術文化学の分野では、諸民族における芸術と文化の役割を可能な限り現実のフィールドワークや具体的な民俗学・文学研究に即して実証的研究を行います。例えば琉球の伝承文学(古歌謡)、オモロ、組踊、琉歌等の研究、あるいは御嶽の発祥由来の研究などを比較言語学や文学、文化人類学の諸方法を援用しつつ研究していくことを目指しています。
●民族音楽学研究領域
■音楽史の分野は、琉球、日本、東洋および西洋の音楽について歴史的研究を行います。古文書古楽譜等の分析解釈に加えて、今日まで伝承されている音楽を対象とする場合は、その音楽の実践に即した研究方法を探究します。
■民族音楽学の分野では、主に対象の中心を琉球の古典音楽に置き、琉球独自の言語表現による文学とも関わり、その音楽的構造や形態との関連を研究するとともにあわせて琉球音楽の歴史的形成に寄与した東南アジア諸国の諸民族の音楽を音楽構造の視点から研究します。
■民族芸能論の分野は、音楽を主体とする諸民族の芸能の総合的研究として、現在の音楽学に欠落している重要な分野です。民族芸能論が対象とする領域は、芸術的および民俗的な音楽をはじめとする舞踊・演劇および民俗芸能を包括します。とくに琉球の伝統的な組踊及び琉球舞踊および民俗芸能は研究の中核を構成します。
博士課程学科室
盧姜威
平成22年度 課程博士学位取得
論文タイトル:『沖縄伝武備志』の研究ー沖縄空手との関わりを中心に―
中国福建省出身の私ですが、「久米三十六姓」先人達の足跡を辿るように、12年前に自然・文化の豊かな「球陽之地」沖縄へやって来ました。沖縄に来てから、縁があって空手と出合い、そこで初めて空手は日本本土ではなく、特殊的な地理に位置する沖縄が、多様な文化を吸収して新たに創り出した世界に誇れる文化の一つであることを知りました。以来、空手に強い関心を持つようになり、本格的に理論と実技の両面から空手の研究を志すようになりました。しかし、周知のように空手についての専門的な大学・研究機関が存在せず、一時期夢を諦めようとも考えていました。幸い本研究科の波照間永吉教授が分野を越え指導してくださった御蔭で、大難なく博士論文を書き上げることができました。
本研究科に在籍する学生は、それぞれ異なった研究テーマに取り組んでいて、互いに刺激しあったり励ましあったりしています。私が「知ることの喜び」を知ったのも、本研究科の仲間達の御蔭だと思います。
三島わかな
平成22年度 論文博士学位取得
論文タイトル:近代沖縄における洋楽受容の歴史的研究―伝統へのまなざし―
本学音楽学部の一期生として入学以来、西洋音楽史の研究を重ねてきました。修士課程修了後は進学せず、県内で大学教育に従事し、一方では今の時代に必要な研究が何かを問いつづけながら、小さな研究を積み重ねてきました。そういった積み重ねが、従来の歴史観に対する疑問を私に抱かせたのでした。とくに沖縄の近代音楽史の領域は研究が立ち遅れており、戦後の文化のあり方を評価するためにも「近代」を見直す必要性を強く感じています。
博士論文「近代沖縄における洋楽受容の歴史的研究 〜伝統へのまなざし〜」では、明治以降のウチナンチュが「西洋」を意識したことで、自意識を強め、みずからの伝統音楽のあり方を模索していく姿が描きだされています。