奏楽堂は、県立芸術大学の首里当蔵キャンパス北東部、グラウンドの北側に位置し、地下一階、地上二階建て、延べ床面積約2000㎡の規模を有する建物です。この建物は、客席390席のホールを中心として、練習室、講義室、録音スタジオ等を備えており、大学の音楽教育に重要な役割を担う施設です。
建物の外観は、その立地が首里城を中心とした歴史的景観への配慮を強く求められる場所であるため、建物の地上高は12mに抑えるとともに、屋根を可能な限り小ブロックに分けることによって大きな単一面を避け、視覚的にも建物を大きく見せない工夫がなされています。また、外部の仕上げは、屋根材に赤瓦、壁材に琉球石灰岩を多く用い、周辺の環境との調和を重視しております。
本施設は、コンサートを主目的としながらも伝統芸能部門の研究発表にも対応可能な種々の設備が施されています。例えば、舞台の開口部の必要な高さは、使用目的によって異なりますが、これを一定の範囲内で調節可能な方式とし、同様に、ホールの残響時間についても壁面に残響可変装置を設置して目的にあわせてこれを調節(1.4秒〜1.8秒)することができます。
附属の練習室や講義室等もそれぞれ遮音構造の壁、床、天井で構成されています。また、水資源の有効利用の観点から、52tの地下貯水槽を備えており、構内の植栽の潅水に利用しています。
奏楽堂は、音楽学部の基本施設として音楽実技の総合的実習、教育研究成果の発表、演奏会活動等の場として不可欠の教育施設であるとともに、音楽演奏の専用施設として地域社会の芸術文化活動のために有効利用を図る施設として位置づけています。