絵を描き心の眼を養う
存在価値の多様化や均質化するグローバル情報社会にあって独創的な画家や造形作家、教育者に求められる基本的な実技能力(観察、描写、素材応用、プレゼン)を深める教育を行います。多様な絵画・造形表現の理解と課題制作による学修から美的価値観を涵養する中で個性を伸ばし、展示や講評、学外活動などを通じ他者理解と社会性を育みながら、学生の独自性を尊重した教育を目指します。個性的な表現活動を支える身体的技術力と思考力、教養と専門性の深度を総合的に養い、卒業後も創作活動を継続し美術の社会的役割に反映しうるよう自ら課題を創出し、独創的な表現を探求する能力を育成します。
油画分野では素描、ドローイング、油彩、素材応用表現をカリキュラムの土台とし、版表現、映像表現、インスタレーション等の実習を通して現代に対応する感性、表現力を養います。2、3年次の進級展を通して自己が創出する表現テーマを探求し、段階的に卒業制作へ向かいます。
日本画分野では素描と伝統的な材料技法の基本を理解することから始め、実習を通して模写、絹本、箔、裏打ち等を習得し、課題制作として人物、風景、自由制作などで修練を重ね、現代における表現研究の下に自己のテーマに基づいた卒業制作に向かいます。
両分野の共通の授業等としては、学外演習(離島フィールドワーク)や美術研究(京都、奈良を主とした研修旅行)、写真(アナログ)や版画(凹凸孔)実習、絵画特論I、II授業として美術作家、キュレーター、評論家による集中講義があります。
沖縄県出身 絵画専攻油画4年(2023年10月現在)
夕日に染まる首里の赤瓦を美術棟から見やる時、大学内のどこからか楽器を奏でる音が聴こえてくる時など、この美しい場所で絵を描けることの豊かさを改めて思います。
作ること、見ること、作ったものを誰かに見てもらうこと。そのいずれも、この4年間で存分に経験しました。美術があらゆる学問や、社会、そして個人の生活と繋がっているということを、ひとつひとつの授業や展示の折に触れて、確かな実感として学びました。各々の作業音が響くアトリエで制作する時間は心地よく静かな熱気に包まれて、いつも学びと気づきに満ちていました。
絵を描くことを、途方もなく広くて深い海を泳ぐことのように思っています。それぞれ違う泳ぎ方で、互いに影響しあいつつ共に行く仲間のいることが、大学生活におけるなによりの幸せでした。
人は生きる指針、共存する証として、どのような時代においても絵を描き続けてきました。高度に情報化し、グローバル化した現代の社会環境においても、自分自身の現実感や存在感を測り、イマジネーションを共有する手段として、普遍的な絵画表現の意義や社会的役割を問うことは、とても重要と考えます。
絵画専攻では、亜熱帯に位置する沖縄の歴史・芸術文化・環境・自然に理解と愛情を持ち、自らの専門性と創作力を高めるために、造形教育の専門性に対して探究心を持って取り組み、他者とのコミュニケーションを積極的に育む人材を求めています。
絵画専攻の学生達は首里の緑豊かな歴史的遺産に囲まれて学生生活を送っています。教授陣は時代の新たな課題に向かい、卒業した各世代は芸術文化の担い手として、また、それぞれの立ち位置において、学生時代に培われた創造力を以って存在感を示しています。カリキュラムは学生個々の制作と創作理念を導き、後押しするものです。二分野に分かれながら、急速に変化し続ける現代にあって沖縄から世界を映し出す反射板とは何かを問いかけるものでもあります。未来へ、学生、教員と共に切磋琢磨していきませんか?