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学長あいさつ

沖縄県立芸術大学は、かつて海洋国家として栄えた琉球國の由緒ある地、首里に1986年に開学して以来、今年で37年目を迎えます。本学の建学の精神は、沖縄文化が造りあげてきた個性の美と人類普遍の美を追究することにあります。これに基づき、伝統芸術の継承と発展はもとより、新たな芸術創造の可能性を広げ、地域ひいては世界の芸術文化の向上発展に寄与できる人材の育成を教育の理念に掲げています。

自由な精神を礎に人間性を表す芸術活動は、優れて人間らしい営為です。先史の洞窟画や縄文の造形が物語るように、原始太古より創造行為は人類の生活と共にありました。そして、今日の高度情報社会あるいは国の目指すSociety 5.0(超スマート社会)において、人には今まで以上に、豊かな感性や自然観、新しいものや変わっていくものに対する好奇心や探求力が求められます。したがって芸術諸領域に携わる者には、今後ますます社会的役割が期待されると同時に、責任ある場面も増してくることでしょう。

本学は、そのような次代を担う豊かな人間性と社会性、国際的視野を備えた作家や演奏家、実演家、研究者、教育者など芸術分野の専門家として、幅広く社会で活躍できる人材の育成を念頭に、個性の伸長を期した少人数教育を行っています。その中で、芸術を志す人に求められる多様な価値観への理解と、多角的な視点の獲得を共に目指します。

地球規模のコロナ禍によって「徹底した行動変容」が求められる中、強弱こそあれ、まだしばらくは活動抑制を余儀無くされますが、そもそも芸術を志す者の表現への欲求は、その方法の変更はあっても、抑制などできるものではありません。そして、社会はすでに多くの場面で価値観の転換が起きていますが、これもまた芸術の世界では、個とともに多様性の尊重は言うまでもないことで、むしろ真に恐れるべきは己の価値観の呪縛であります。このことさえ承知していれば、きっと私どもの生きる術でウィズコロナに対応できるはずです。

これから社会のデジタルシフトは不可逆的に加速し、ますます世界の平準化は進むばかりです。だからこそ、自らの拠って立つ文化を認識し、芸術の多様性、独創性の源泉である、先入観に囚われない批評的精神を、生涯を通して更新し続けたいものです。

世界的な遺跡が散在するこの美しい南の島には、大交易時代から現代に至るまで異文化を受容し個性ある優れた文化芸術を創造してきた歴史と、都市部にあっても大自然の変化を間近に感じることができる得難い環境があります。この沖縄の歴史と環境は自ずと、芸術と共に人生を歩んで行くのに必要な柔軟で強かな精神を育んでくれるに違いありません。

沖縄県立芸術大学長
波多野 泉

[写真]学長 波多野 泉

プロフィール

波多野 泉(はたの いずみ 1957年2月22日〜) 滋賀県出身。 沖縄県立芸術大学第8代学長。彫刻家。東京藝術大学大学院修了。沖縄県立博物館・美術館、あさご芸術の森美術館(兵庫)、丸沼芸術の森(埼玉)、國立臺灣藝術大学、宜野座村漢那区、北中城村大城、松阪市等に作品が収蔵されている。

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